「広報部より緊急のお知らせです。当社の仕入れ品目が、先週から無断で入れ替わっております」
ビタミンC広報が、仕入れ台帳を掲げて社内放送のマイクを握った。8月下旬。売り場からゴーヤとピーマンが減り、代わりにぶどうと梨が積み上がる——見た目には豊かになったこの入れ替えが、社内のビタミンC在庫を静かに削っていた。
季節の変わり目に、こんな心当たりはないでしょうか。
- 食生活は変えていないのに、なんとなく肌の調子が落ちてきた
- 夏より野菜・果物をよく食べている気がするのに、体調が上向かない
- 「秋の味覚」を意識して買い物のカゴの中身が変わった
秋の入り口に起きやすいのは、食べる量の減少ではなく、同じカテゴリの中で中身がすり替わるタイプの不足かもしれません。
「野菜と果物を食べている」は、ビタミンCの量を保証しない
ビタミンCは食材による差が非常に大きい栄養素です。日本食品標準成分表をもとに、可食部100gあたりの含有量を並べてみます。
| 食材(可食部100g) | ビタミンCの目安 |
|---|---|
| 赤ピーマン | 約170mg |
| 黄ピーマン | 約150mg |
| キウイ(黄肉種) | 約140mg |
| ゴーヤ(にがうり) | 約76mg |
| 青ピーマン | 約76mg |
| キウイ(緑肉種) | 約71mg |
| 柿 | 約70mg |
| さつまいも(蒸し) | 約29mg |
| トマト | 約15mg |
| すいか | 約10mg |
| りんご | 約4mg |
| ぶどう | 約2mg |
| 梨 | 約3mg |
同じ「果物」の中でも、キウイ(黄肉種)約140mgとぶどう約2mgでは約70倍の開きがあります。緑肉種のキウイ約71mgと比べても約35倍です。
つまり「果物を食べているかどうか」ではなく、どの果物を食べているかでその日の摂取量が決まります。成人のビタミンC推奨量は厚生労働省の食事摂取基準で1日100mgとされていますから、ぶどうだけで100mgに届かせようとすると、単純計算で可食部5kgが必要になる計算です。現実的な量ではありません。
9月に起きる「静かな入れ替え」
夏の食卓は、実はビタミンCの供給源に恵まれています。ピーマン・ゴーヤ・トマトといった夏野菜が主役になるためです。ここで起きやすいのが次のすり替えです。
| 夏に食べていたもの | 秋に置き換わりやすいもの | 差分の目安 |
|---|---|---|
| 青ピーマン 50g(約38mg) | ぶどう 100g(約2mg) | 約36mg減 |
| ゴーヤ 60g(約46mg) | 梨 100g(約3mg) | 約43mg減 |
| トマト 150g(約23mg) | りんご 100g(約4mg) | 約19mg減 |
この3つが同時に起きれば、1日あたり約98mgの減少です。推奨量100mgとほぼ同じ量が、献立の主観的な満足度を落とさないまま消えていることになります。
「秋になって食欲が戻ったのに調子が上がらない」という体感は、量ではなく中身の入れ替わりで説明がつく場合があります。
不足するとどうなる?——「減った」ことに気づきにくい栄養素
ビタミンCは水に溶ける性質があり、体内に大量にため込んでおくことができないと言われています。摂取量が減れば体内の量も比較的早く下がっていくため、貯金でしのげる期間が短いのが特徴です。
不足しやすい状態が続くと、次のようなサインが出ることがあるとされています。
- 肌の乾燥やハリの低下を感じやすくなる
- 歯ぐきから出血しやすくなる
- 疲労感が抜けにくくなる
- 傷や口内炎の治りが遅く感じられる
いずれも「季節の変わり目だから」「寝不足だから」と別の理由に置き換えられやすいものばかりです。だからこそ、体感ではなく食材の実数で見直すほうが確実だとビタミンC広報は主張します。
なお、喫煙者は非喫煙者よりビタミンCの必要量が多くなる可能性が指摘されており、食事摂取基準でも喫煙者は推奨量以上の摂取が望ましいとされています。
秋に量を落とさない、3つの実践ポイント
① 秋の果物は「柿とキウイ」を軸にする
上の表のとおり、秋に出回る果物の中で柿は約70mg/100gと高い水準です。柿1個(可食部約150g)で約105mgとなり、これだけで1日の推奨量に相当する計算になります。キウイは通年入手しやすく、黄肉種なら1個(可食部約100g)で約140mgです。
「秋だから旬の果物を」と考えたときに、ぶどう・梨・りんごだけで完結させないことが、そのまま摂取量の維持につながります。
② さつまいもは「加熱に強い供給源」として数える
ビタミンCは加熱や水に弱く、茹でると食材によっては半分程度まで減ることがあると言われています。ところがさつまいもは、豊富なでんぷんがビタミンCを包み込むように保護するため、加熱後も比較的残りやすいという特徴があります。
蒸したさつまいも100gで約29mgは、果物としては控えめに見えますが、「火を通しても残る」という点で秋の主食系食材としては貴重です。焼き芋1本(可食部約200g)なら約58mg前後が期待できる計算になります。
③ 1回にまとめず、2〜3回に分ける
体内にため込めない性質上、1回に大量に摂っても使われなかったぶんは排出されやすいと考えられています。朝にキウイ、夕方に柿、というように時間を分けて摂るほうが、体内の量を保ちやすいと言われています。
「昼にサラダを大盛りにしたから今日は十分」ではなく、朝・昼・夜のどこか2か所に供給点をつくるイメージです。
サプリメントという選択肢
とはいえ、柿もキウイも毎日欠かさず用意するのは負担が大きいのが実情です。特に9月〜10月は気温差が大きく、買い物や調理の手間そのものが落ちやすい時期でもあります。
食事で土台をつくったうえで、足りない日の補填としてサプリメントを併用するのは現実的な選択肢です。選ぶときは次の点を目安にすると比較しやすくなります。
- 1粒あたりの含有量:数値が明記されているか
- 持続型(タイムリリース)かどうか:分けて摂る手間を減らせる可能性がある
- 1日あたりのコスト:継続できる価格帯か
まとめ:秋は「量」ではなく「品目」を点検する季節
「秋になって食生活が乱れた覚えはない」——そのとおりかもしれません。乱れていないのに減る、というのが季節の変わり目の厄介なところです。
- 果物はキウイ・柿を軸に据える
- さつまいもは加熱に強い供給源として数える
- 1回にまとめず、1日2〜3回に分ける
「広報部からの最終通達です。仕入れ品目の入れ替えは、必ず在庫量を確認してから行うこと。見た目が豊かになったからといって、中身まで豊かになったとは限りません。……以上、ビタミンC広報でした」
📊 ビタミンCの1日あたり摂取基準(成人18〜64歳)
| 指標 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 推奨量 | 100mg/日 | 100mg/日 |
※ 推奨量は壊血病の予防ではなく「良好な栄養状態の確実な維持」の観点から算定されています。耐容上限量は設定されていません。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(原典確認日 2026-07-06)|厚生労働省 食事摂取基準ページ
※基準値は年齢・性別・妊娠/授乳の有無で異なります。体調に不安がある場合は医療機関にご相談ください。
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ビタミンCに関するよくある質問
Q. ビタミンC不足の症状は?
A. 肌の不調・疲れやすさ・免疫の低下などが代表的なサインとされています。
Q. ビタミンCはいつ飲むのが良い?
A. 体内に貯めておけないため、数回に分けてこまめに摂るのがよいとされます。
Q. どんな食品に多い?
A. 柑橘類・キウイ・ピーマン・ブロッコリーなどに多く含まれます。
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